づれづれ草

最近始めたことや、普段の生活の備忘録

いまさら『ビタミンF』

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今まで読んだ本の内容は忘却の彼方へ送り込んでいたため、備忘録として残していくこととしたい。

 

いまさら感が半端ないが、重松清著「ビタミンF」を読んだ。書店のPOPに誘われて

なんとなく買ってしまった。POPにあるように「号泣」はしなかった。が、心に刺さった。

「おじさん」になりかけている人にとっての心の栄養となる本という前提で読んでいたので、最初の2話を読んだ段階では予定調和な小説だと感じた。もうやめようかとも思った。しかし、その先はいじめ、娘の不良との交際、離婚等の重いテーマの話になり一気に読み進めてしまった。

 家族は長く一緒にいればいるほど深く理解し合うものだと思いきや、実は時が経つにつれて心が離れ、理解ができなくなってくる。家庭では父として、職場では上司として弱みを見せずに頑張れば頑張るほど心が通じなくなり、そのようなことは往々にしてありがちだが、気づかずに、あるいは気づかないふりをして過ごしている。家庭は子にとっては自分の新しい家庭を築くためにやがて出ていくべき場所である。当たり前のことだが、今回改めて気付かされた。

 全体を通じて、とにかく非常に読みやすく、わかりやすい文体であり、心の栄養素を自認する小説だけに最終的には前向きな気持ちになれるため安心して読める。この短編集は「Father」、「Family」といった頭文字にFが付く単語を散りばめてあるとのことだが、心の「不満」・「不安」・「不信」等の「F]を取り除く処方箋となる。40歳前後の男性を主眼とした本だろうが、アラフィフであり小中学生の父親でもある僕にとってはひと事ではなく深く印象に残る1冊となった。